究極の英語学習法
K/Hシステム
中級編
よくある質問と補足情報
パラグラフ1
I would like to talk about what I would envision as an ideal boss.
1-1 文法
Q:what I would envision のところに would が入ることでどういう意味になるのでしょうか?
A:「あえて考えれば...(こうなるだろうなぁ)」という if 節 が後ろに隠れた仮定法です。「私の考える上司像はこれだ!」と強く言い切った感じではなく、より丁寧で柔らかい響きになります。「入門編 ワークブック」(p.125) [発展語句解説]を参考にしてみてください。 他にも、助動詞 wouldの入った仮定の形にして、より丁寧な響きになるような配慮をしている箇所があります。同文のI would like to talk about… 、PG3: I would respect a boss... 、 PG7: Would you please...など。 これらの部分に意識して練習することで、would がサッと入ることで醸し出される柔らかく丁寧な響きを味わいながら、感覚を磨いていきましょう。
I would like to talk about what I would envision as an ideal boss.
1-2 文法
Q:cares about... と values you... 間に and がないのはどうしてですか?他にも、PG2: to help define, help clarify、PG3: who can teach you とwho has expertise の間に and がないのはなぜですか?
スピーカーの中に、ある「ひとつのこと(概念)」について話している意識があるときに、このように異なる項目の間に and を入れずに列挙することがよくされます。例えば、ある「ひとつのもの」について (1) 一言では言い表せない場合 や (2) 2、3つの異なる言い方がある場合などです。聞き手により分かってもらいやすいように、「ひとつのこと(概念)」を、そこに含まれている複数の要素を挙げて説明したり、いくつかの異なる角度や切り口から見た、異なる言い方で説明したりしている感覚です。 例えば、PG1の該当箇所を見てみると、「an ideal boss (理想の上司)」の特徴に関して、(a) cares about you as a person だけでは言い足りない側面を (b) values you as an important person とつけ足して説明しています。(a) と (b) の両方セットでひとつの「理想の上司」の概念を言い表している感覚なのです。PG2 や PG3 も同様です。PG2 「内容をきちんと説明してくれて、かつ、誤解のないようクリアにしてくれる」、PG3 「教えてくれて、かつ専門性も持っている人」のようになります。 一方で、スピーカーが、「まったく独立した概念を挙げている」という意識の場合には [A, B, and C] のように間に and がきちんと入ります。例えば、PG1 の by the way that person talks to you [概念A], the way the person include you in different activities [概念B], AND the way the person is trusting you with certain work responsibilities [概念C] は、[A, B, and C] のように and が入っています。これは、A, B, Cのそれぞれ独立した異なる概念を挙げているという意識なのです。つまり、ここでは「上司が部下を人として大切にし、重んじてくれることは分かるんです(You can sense that...)」と言った後で、「それがどういうことから分かるのか(by…)」という項目として、「AやBやC」という3つの異なる概念を挙げてくれているわけです。
you can sense that by the way that person talks to you, the way the person includes you in different activities, and the way the person is trusting you with certain work responsibilities.
1-3 文法
Q:that person の that は指示代名詞ですか?関係代名詞かと思っていました。
A:はい、指示代名詞(形容詞的用法)です。この前の文で、「I believe it is a boss... (こんな上司だと思いますね...)」と仮想の上司を思い浮かべて話しています。そして、続く you can sense that... の文では、この仮想の上司を、that person(「その人」)と指しているのです。
パラグラフ2
At the same time, the boss needs to give clear direction and to make clear sets of expectations.
2-1 文法
Q:sets of expectations と some other type of capability のこの2つの表現は、a cup of tea の用法とは異なりますか?
A:異なります。 まず、a cup of tea は、液体などの「数えられない名詞」の「量」を示す言い方の一つです。他にも、a glass of water とか a bottle of wine などがあります。 一方、sets of expectations は、数えられる名詞 (expectations) に関して、「その集合体 (a set) が複数ある」ことを示した言い方です。つまり、プロジェクトや仕事の分野ごとに、それぞれ具体的に「当然すべきこと (expectations) 」があるわけですが、ある一つのプロジェクトや仕事の分野に関する expectations を一つの「まとまり」ととらえて "a set of expectations" と呼んでいます。一人一人が複数のプロジェクトや異なる分野の仕事を任されている場合、それぞれに関して "a set of expectations" があり、それを全部まとめて "sets of expectations" と呼んでいるのです。
パラグラフ3
whether that's an engineer or some other type of capability.
3-1 単・複数
Q:some other type of capability の部分は、なぜ some other types of... と複数形にならないのですか?
A:まず、念のために確認ですが、この some は、「いくつかの(複数)」の意味ではなく、「何らかの」の方の意味です。 その上でさらに説明すると、ここは whether that is .. という表現を使って「~でもよいし、~でもよいし」「~であったり、~であったり」と具体的な例を挙げている部分です。この whether that is ... の表現は、whether that is A or B or C or... のように、頭に浮かぶ例を「ひとつずつ」挙げていくときの言い方です。しかも、ここは that is… と、主語を単数でたてて例を挙げるかたちにしていますから、例の部分は「単数」でよいのです。従って、ひとつめの例は an engineer で単数形になっています。そして同様に、ふたつめの例も、「何らかのほかの種類のもの」という、ひどく漠然とした広がりのある「ひとつの例」を単数で挙げているわけです。
a boss that is perhaps technically an expert who can teach you, whether that's an engineer... it's someone who is able to think in a big picture...
3-2 音
Q:PG3 の a boss that is... の that is、whether that's... の that's、PG4 の it's someone... の it's が最初聞いたとき、聞き取れませんでした。 今は文を見てこれらの存在が分かっているし、意識の中にあるため、音を聞いた時にそれなりに分かりますが、まだよほど注意しないと聞き取れません。こういうものなのでしょうか? それとも聞き取るために何かコツ・練習方法がありますか?
A:英語では、拍の入る箇所はトップの子音から弾く感じでしっかりとストレスが入ります。逆に拍と拍の間では、力が抜けて弱く楽~に発音されるのでしたね。上で挙げてくださった that や it は、この「力がス~ッと抜ける箇所」にあたるため、非常に軽く、短い音で発音されています。
以下に、1)弱拍部分に来る that('s) や it('s) の音の一般的特徴と、 2)質問してくださった箇所の音のポイント をまとめておきましたので、参考にしてしっかり練習してみてください。
1)弱拍部分に来る that('s) や it('s) の音の一般的特徴
・弱拍部分に来るため、母音は「曖昧母音」ではっきりとした音では聞こえない
・そのために、音としては、子音の音の方がより聞こえてくる
→ that は [thゥ(t)] または [ズッ(t)] のような音になりがち
→ that isも [thゥッテズ] または [ズッテズ] のような音になりがち
→ that's も [thゥッツ] または [ズッツ] のような音になりがち
→ it's も [ゥッツ] [ェッツ] のような音になりがち
あとは、後ろに来る単語とのリエゾンも関係してくるので 2)を参考に練習。
2)該当箇所の音のポイント
a ), b ) については、以下のように大きい文字のところにストレスが入り、それ以外のところは、ストレスの後ろに来る問題の部分も含めてすべて弱拍で、力がス~ッと抜けて母音も曖昧母音になってサラサラサラと発音されます。c)は、 someone の頭の so-にストレスが入るため、その直前に来ている問題の it'sは、ジャンプの前の「力の溜め」のような感じで、短く、弱く発音されます。スピーカーの英語を「お手本」として、じっくりよく聞いて真似る....という練習を繰り返し、弱く発音される箇所は、自分も上手に力を抜いて発音できるようにします。
a ) a boss that is.. アバ ァス ズッティズ
b ) whether that's an engineer フエザーズッ ツァ(ヌ)ネンジニァ
c ) it's someone エッ ッサムワ(ヌ)
パラグラフ4
to think beyond just your responsibility, but to think and put into balance the entire organization or the entire department or the entire group.
4-1 文法
Q:your responsibility と出てきます。これは"自分の責任"という意味だと解説されていますが、your は、このメッセージを聞いている相手(=部下)のことを指しているととらえて、「部下の責任以上の事を考える」と理解することも可能な気がしますが。
A:この your responsibility の yourは、おっしゃる通り、「部下」で理解してください。実は、ここを「部下の」と理解するか「上司本人の」と理解するかが、米人の聞き手の間でも意見の分かれる点だったので、スピーカーに確認をしたところ、スピーカーは「部下個人の責任」を意味していたということでした。 ということで、「部下(であるあなた)の責任以上のことを考える」という意味になります。これで、テキストに出てくる you のすべてが一貫して、「部下としてのあなた」を想定した一般論の you として使われていることになり、一貫した理解が可能になりますね。テキストでは、スピーカーに確認できる前に、聞き手側でより一般的だった理解を採用して「上司自身の」の理解で解説がされていますが、上記のように理解してください。
パラグラフ5
5-1 音
Q:CDを聞いていると、不定冠詞 "a" を「エィ」と発音している箇所があるようです。これは、よく見られることなのでしょうか?
次に来る名詞を丁寧に選んでいるときに、不定冠詞 "a" を「エィ」と発音することがよくあります。これは、一種の「言いよどみ」ですが、次に来る概念が不特定のもの(名詞)だということは話者の頭にあるものの、どういう具体的な名詞が最も適切か思案中であるために、最初の音が母音になるかどうかわからない場合に、多くの人が「エィ」の方で "a" を発音して次の名詞までの間をもたせます。 ただ、最近では、教育レベルがそれほど高くない人のなかには、不定冠詞 "a" を、「え?すべてエイって発音するんじゃないの?」と思ってしまっているアメリカ人も出てきているほど一般的になってきています。年配の人や文法にうるさい人だと、やたらと「エィ」と発音するのは気になるようです。
パラグラフ7
"Help me understand what was taking place here"
7-1 意味
Q:命令文を使う際のトーンについて疑問が湧いてきました。 "Help me understand..."と2回例があげられていますが、これには please も would you も help の前についていません。 それらをつけなくても "Help me understand ..."という聞き方は、相手に敬意を払った聞き方なのでしょうか? helpという単語には独特の意味があって、would you とか could you をつけなくても強い響きにならないということなのでしょうか?
A:命令形の形であるにもかかわらず Help me understand.. がどうして丁寧なのかは、help 自体の語感と、Help me understand..という言い方が使われるコンテクストの両方を考えてみると、より理解しやすいと思います。
◇ help の語感
helpという動詞には次のようなプラスの響きがあるため、好んで使われる傾向があります。まず、help というのは、その行為が「相手にとってプラスとなる行為である」ということが意味に含まれています。また同時に、「helpする者」と、そこからプラスを得る「help される者」の間の一体感が強調される言葉でもあります。
◇ 命令形が適切なコンテクスト
次に、help を使ったとしても、"Help me understand... "という「命令形」を使った言い方で、敬意を払った話し方になるかどうかについてです。これは、この表現が使われるコンテクストを考えると、充分に丁寧なニュアンスになっていると言えます。
"Help me understand what was taking place here" を例にとって見てみましょう。まず、この表現が使われる上での前提があります。単に「教えてくれ Could you tell me… 」や「説明してくれ Could you explain... 」といった表現に対して、このような「理解したい understand 」という一見大げさに思える言い方が使われる状況というのは、軽く事情を聞いているというのではなく、何か重大な問題が起こったため、それについての事情を聞いている状況であるのが普通です。
実は、「緊急・重大」な状況のもとでは命令形が比較的問題なく使われます。このとき、「双方にとって(命令形で求められている行為の)必要性が了解できる状況である」という点が鍵になります。何か重大な問題が起こり、上司としてその状況について理解・把握することの「緊急性や重大性」が、上司と部下の双方に了解されている状況であるわけです。
◇ understand を使うことで「話者の側のニーズ」にフォーカスしたことの効用
この「重大性・緊急性から命令形が比較的適切に使える状況」のもとで、「どういう状況だったか私に教えてほしい」というメッセージを伝えたいわけです。そのときの言い方として、例えば先ほどの explain を使って "(Could you) explain what was taking place here?" も可能ですね。ただ、責任問題に関わってくるような重大な問題に関して話している際には、explain という行為を相手に直接命令すると、「事情を説明しなさい」と、相手に「説明責任」があって責任追及をしているような強いニュアンスになります。確かに Could you...? という疑問文のかたちにすれば丁寧な言い方になりますので、日常的な用件で事情を聞いている状況においては心配いりません。けれども、重大事に関して使われた場合は、やはりあくまでも主語が you であることもあって責任追及のような響きになる可能性が残ります。
ここでは、「どういう状況だったか私に教えてほしい」というメッセージを、Help me understand... を使って、直訳的に言うと「どういう状況だったかを私が理解することを手助けしてほしい」というかたちにしたわけです。つまり、you を使わずに、「私側の状況」を問題にする言い方にしています。これによって、「まずは事情をきちんと理解したいんです。その理解を手伝ってもらえますか」というニュアンスになり、「問題の責任の所在どうこうより、まずはきちんと理解したい」というメッセージがより強調されて伝わるかたちになります。
以上、まとめると、1) 命令形が比較的適切に使われる状況であることに加え、2) プラスのニュアンスをもつ help という単語が使われたことと、そして、3) 「話者の側のニーズ」にフォーカスをした understand を使うことによって you を主語にして言うことを避けたこと、これら複数の要因から、ここは命令形であっても、相手に敬意を払った丁寧なもの言いになっています。